世界に誇れる日本文化かどうかはわからないが、とにかく人気があるのが忍者(NINJA)だ。
ショー・コスギ主演の忍者映画(日本未公開)が全米で大ヒットし、そこから黒装束姿の忍者が世界の「NINJA」へと変貌したのだった。
しかし、本当の忍者は、映画に出てくるような黒装束姿ではない。
というのも、あのような黒装束姿だと、すぐに忍者だとバレてしまうからだ。
実際の忍者は、農民、町民、僧侶、等々、どこにでもいる人達の格好をして、諜報活動をしていたのだ。
また、当時、忍者は「忍者」という名称ではなかったのだ。
今でいうところの忍者は、各戦国大名毎に呼び名が異なっていたのだ。
戦国最強といわれた武田信玄の武田家では、忍者のことを「透破(すっぱ)」といい、織田信長の織田家では「饗談(きょうだん)」、徳川家康の徳川家では「隠密(おんみつ)」、上杉謙信の上杉家では「軒猿(のきざる)」、といったようにそれぞれの呼び名で忍者は呼ばれていたのだ。
ちなみに、武田家が忍者のことを呼んでいた「透破(すっぱ)」は、現代でも使う「すっぱ抜く」の語源だ。
「透破(すっぱ)」が、密かに行動し情報を収集して明るみに出したり、不意に刃物を抜くことになぞらえて、秘密や醜聞、不祥事などを突き止め、暴露することを「すっぱ抜く」といつしか言うようになり、現在に至っている。
■各戦国大名・地域などにおける忍者の名称
・武田家:透破(すっぱ)
・織田家:饗談(きょうだん)
・徳川家:隠密(おんみつ)
・上杉家:軒猿(のきざる)
・伊達氏:黒脛巾組(くろはばきぐみ)
・毛利氏:座頭衆(ざとうしゅう)
・島津氏:山潜り(やまくぐり)
・六角氏:甲賀者(こうかもの)
・伊賀国:伊賀者(いがもの)
・天皇家:村雲衆(むらくもしゅう)
このように、本物の忍者は、実は黒装束ではなく地味な存在で、呼び名も「忍者」ではなかったのだ。
訪日外国人観光客の中には、忍者に憧れて来日する人もいるかもしれないが、機会があれば、真の忍者はこういうものなのだと教えてあげよう。