世の中には「これといったら、あの店しかない!」という定番の老舗や名店があるものだ。
今回のニッポンニュースは、そんな定番の老舗名店を取り上げたい。
とろろ汁といったら、東海道丸子宿の元祖・丁子屋
以前から、機会があればぜひ行ってみたいと願っていた老舗名店が、とろろ汁の元祖「丁子屋」だ。
1596年(慶長元年)に創業した丁子屋は、実に400余年の歴史を誇る老舗中の老舗、名店中の名店であるのは誰もが知るところ。
旧東海道の丸子宿(まりこしゅく。「鞠子宿」とも表記)を歩くと、その旧東海道沿いに創業当時とほぼ瓜二つのような茅葺き屋根の丁子屋が店を構えている。
丁子屋の店前には、「元祖 丁子屋 名物とろろじる」と掘られた巨大石や、「鞠子宿 丁子屋」と書かれた木製看板、また「名物 とろゝじる 丁子屋」と筆を入れられた巨大提灯や「とろろ汁」と書かれた暖簾があり、どれもこれも風情を感じさせてくれる。
11:00の開店時間に合わせ、筆者が約5分前に行くと、まだ客は誰もおらず、「開店は十一時です。」の告知板前に一人開店を待ち望んだ。
やがて、壮年夫婦2人も現れ、筆者の後ろに並びだす。
開店時間11:00きっかりに店の引き戸が開き、「いらっしゃいませ」の声とともに女性店員さんが現れた。
さらに、「お一人様ですか?」と訊かれ、店内奥へと案内される。
その途中には、「丁子屋 お写真コーナー 『とろろ職人』」があり、観光地に多い顔ハメ看板の、もっと丁寧になり切れる版といったところか。
そこを過ぎると、下足場となり、靴を脱ぐ。
その後、通されたのは、外光と暖色系の柔らかい室内灯の光が見事に調和したお座敷だった。
お座敷でも、椅子に腰掛けて優雅にとろろ汁を食べるスタイル。
何回か丁子屋を訪れている、前述の壮年夫婦は店員さんに「椅子に変わっちゃたの? 以前来た時は座布団に座る形式だったよね?」と話しかけていたのを耳にした筆者は、椅子に腰掛けるスタイルはこの数年で出現したのかと知ったのだった。
まあ、椅子でも特に問題なし、何せ、筆者はこの日の「1番乗り」だったから、自分好みの席を選ぶことができた。
選んだ席は、鴨居に飾られた歌川広重『東海道五十三次』の「丸子」直下の席だ。
早速、お品書きを繰ってみると、とろろ汁にも幾つかのバリエーションが。
宿(しゅく)の名前と同じで、手頃な値段の「丸子」にしようかと思ったが、次に訪れるのがいつになるかわからないから、ここはちょっと奮発して、「丸子」のワンランク上の「本陣」を注文した。
「本陣」と「丸子」の差は、おかべ揚げ、甘味などが付くか付かないかだ。
おかべ揚げとは、擦り下ろした山芋を団子状にして油で揚げたものだ。
とろろ汁「本陣」が運ばれてきた。
一人ひとりにおひつが支給され、蓋を開けると、ゆうに茶碗3~4杯分の白飯が湯気を立てていた。
普段から大盛りを食べる筆者でさえも、このとろろ汁の白飯はなかなかのボリュームで、食べた後の満腹感は100点満点だ。
竹焼き塩をつけながら食べるおかべ揚げは、上品な天ぷらに勝るとも劣らない美味だった。
甘味は抹茶餡の入った餅だ。
いうまでもなく、とろろ汁をはじめとした全てのお品の味も満点だし、とろろ汁が出されるまでの間や食後に飲んでいた緑茶も、さすが茶処・静岡だけあって、味が満点、筆者はガブ飲みした。
会計後は、店員さんに勧められ、店内に常設された歴史資料館も見学、実際に昔使用された摺鉢や宿丁子屋にちなんだ芭蕉翁、十返舎一九、安藤広重の作品を閲覧した。
訪れた時間が早かったこともあり、バスツアー等の団体客がおらず、団体客が使用するであろうお座敷も拝見し、パチリと撮影。
和室には、やはり椅子よりも座布団かなと再確認した次第だ。
やはりメジャーな、とろろ汁専門の老舗である丁子屋は、時間帯によってはかなりの混雑が予想される。
筆者がお品書きを眺めている間にも、客が瞬く間に増え、食後の緑茶を堪能している頃には、ほぼ椅子が埋まっていた。
ストレスフリーでとろろ汁を堪能した方が、しっかり味わえるし、慌てて食べることもないので、やはり11:00の開店に合わせて、訪れるのがオススメだ。
■静岡市で食事するならとろろ汁の『元祖 丁子屋』へ
https://www.chojiya.info/