昨年2016年12月24日に弱冠14歳でプロ棋士デビュー、その後はあれよ、あれよと勝ち続け、一躍時の人となった将棋の藤井聡太四段。
国内外でのニュースでも藤井四段の快進撃は取り上げられ、その白熱した報道ぶりはもはや勝ち負けのみならず、対局中の昼食に何を注文して食べたのかにまで及ぶことも。
普段は将棋すら観ないし、よく知らない人たちをも巻き込んだ、そんな藤井四段の強さとは一体どのようなものなのだろうか?
棋士達でも気づきにくい手や、盲点だったりする手をいとも簡単に指す藤井四段
藤井四段の強さを語る上で、同じ棋士たちの言葉が興味深い。
豊川七段によると、棋士達でもなかなか気づきにくい手や、盲点だったりする手をいとも簡単に藤井四段は指すとのことなのだ。
棋士は、基本的には互いに相手の戦術や指し手を読み解いた上で、一手一手を指している。
しかし、藤井四段の指し手は、そうした手の読み合いから外れた、盲点になっている手だったりするため、対戦相手の棋士は手を指されてから「その手は自分の読み筋にはないよ~」ということがしばしばあるようなのだ。
なぜ、藤井四段は、棋士ですら読み落としてしまうような手を指せるのだろうか?
藤井四段の独創的な指し手の原点は、AIを駆使したコンピュータ将棋
”読みのプロ”である棋士達ですら気づきにくい手を何なく指す藤井四段の強さについて、先日放送されたNHKスペシャル「14歳棋士 藤井聡太 ”進化”の秘密」では、かなり詳しく探っていた。
同番組中、藤井四段の強さの理由の1つとして挙げていたのが、幼少時から慣れ親しんできた、AIを駆使したコンピュータ将棋。
この「AI」とは、最近何かと様々な分野で使われ出している「人工知能」をいうのだが、将棋の分野にも進出、最高峰の人工知能を搭載したコンピュータ将棋が、佐藤天彦名人を負かしたのは記憶に新しい。
もちろん幼少期の藤井四段が慣れ親しんだコンピュータ将棋のAIは、そこまで強いものではなかっただろう。
だが、そこまで強くなくても、AI駆使のコンピュータ将棋は、一見この局面でこの手はあり得ないだろうという手を指したり、将棋を熟知している人間ならば、まずは読み筋から切り捨てるような、棋理に反する手もしっかり読み切って指したりするのだ。
この局面では成立しない手と思ったものの、いざその成立しない手を指されてみると、実はしっかり指し手として成立してるというのがAIを駆使したコンピュータ将棋なのだ。
ゆえに、その影響を受けた藤井四段も従来の価値観にはない独創的な手を指し、対戦した棋士が意表を突かれ、面食らってしまうのだ。
今後の将棋は、従来の既成概念に囚われないで最善手を追求するのが重要
棋士は前述したように”読みのプロ”なので、指し手の読みに関してはかなり深くまで、またかなり先々まで読むことができる。
その確かな指し手が、長い将棋の歴史において、ある局面や戦法で定番と化し、序盤ではこの手を指すのが良いと決まってる先手後手の応酬手順を形作った。
その最善とされている先手後手の応酬手順を、将棋界では定跡という(囲碁界では定石)。
そうした定跡や既成概念、棋理に囚われずに指すのが、何度も言うが、AIを駆使したコンピュータ将棋の特徴だ。
今後の将棋は、いかに従来の定跡や棋理、先入観に囚われないで、その局面における最善手を探求し、追求するかがますます重要になってくるだろう。
そして藤井四段の従来の既成概念に囚われない指しっぷりが、彼の強さの根源になっていることは間違いないだろう。
藤井四段の登場は、確実に将棋界に新風を吹き込んだ。