階級制が揺らぐ問題試合 ~ボクシングWBC世界バンタム級選手権 山中慎介 VS ルイス・ネリ~【連載:アキラの着目】

3月1日両国国技館で行われた、ボクシングWBC世界バンタム級タイトルマッチは、山中慎介選手(35歳・帝拳ジム)が、4回にルイス・ネリ(23歳・メキシコ)にTKOで敗れたのはご承知の通り。

この敗戦により、試合後に山中慎介選手は引退を表明したが、最後の試合となったこのネリ戦は、あまりにもアンフェアな試合であった。

アンフェアな試合だった山中 VS ネリ戦

というのも、試合前日の体重計量でルイス・ネリ(23歳・メキシコ 当時王者)が1回目の計量で55.8kgと2.3kgも超過し、2回目の計量でも54.8kgで、まだ1.3kgの超過。

端からバンタム級のリミット体重である53.5kgを遵守するつもりはなく、減量放棄とみられても仕方がないようなあるまじき態度だった。

無理に減量をして負けるリスクが高まるのならば、契約違反であろうが減量をあえて放棄し、ベストコンディションを維持して、なおかつ体重の乗ったパンチを打てる方が良い、という判断で今回の試合に挑んだのは明白だ。

細かく17の階級に分けているボクシングにおいて、規定体重を厳守するのはルールとして当然のこと。

体重がたった数百グラム異なるだけでも、パンチの威力に差が出るからこその階級制なのだから、ネリの体重超過は明らかに厳罰だ。

このアンフェアな試合だった山中 VS ネリ戦について専門家や芸能人がコメントを寄せている。

■元WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者・内山高志氏
「体重超過を犯し、王座を剥奪された前王者のネリに有利に働いた世界戦だった」、「アンフェアな相手と戦った山中の方が相当きつかったと思う」。

■後輩のWBA世界ミドル級王者・村田諒太選手
「前日計量で大幅超過した相手との体重差や体力のハンデを背負った試合」、「ドーピングもそうだけど、ルールを厳正化しないとだめ。そうしないと、どうやったってしこりが残る」、「計量失敗やドーピング違反の選手は2度と使わないぐらいにしないと競技は衰退する」。

■元WBCスーパーフェザー級王者・三浦隆司氏
「(ネリは)体重オーバーしてベルトを捨てても勝ちにきた。そういうのは許せないし歯がゆい」。

■元WBC世界バンタム級王者・元WBC世界フェザー級王者・元WBC世界スーパーバンタム級王者・長谷川穂積氏
「結果的に体重超過の影響があったのは明白だ。ネリ選手は明らかに前回より力強さがあり、減量苦がなかったと感じた。ウエートをつくらない(=リミット体重にまで減量をしない)ネリ選手の行為は、ボクシングという競技に対する冒とくだと思っている」。

■お笑いコンビ「極楽とんぼ」加藤浩次氏
「自分の連勝記録を守りたかっただけ」、「2階級違うわけです。全然違うから。だから階級分けってあるわけですよ。パンチが全然、違うわけだから。これを許してしまったら階級分けの意味がまったくない。これだとボクシング自体が衰退するんじゃないのと思ってしまいます」(自身がMCを務めるワイドショーで)。

すでにチケットが売れてしまっていることや、TV中継が決まっていることなど、いわゆる興行優先の足かせがある中で、減量失敗だからといって簡単に試合を中止にできない事情もあり、そんな最悪状況で明らかに”2階級上”になってしまった選手と戦わざるを得なかった山中選手については、本当に気の毒としかいいようがない。

こんな悪行が今後も許されるはずはなく、階級制ボクシングを遵守する上でも、減量失敗の選手はリングに上げてはならないといった、厳罰な規定を早急に作るべきではないか。

契約体重を犯し、”2階級上”の体格となり、戦いに有利となって勝つことができた選手が、そのままファイトマネーが支払われるのも、実に納得がいかない。

ただ唯一、このアンフェアな試合で救いがあったのは、試合後に両国国技館の観客が、勝って喜んでいたネリに対し、「帰れよ!」の罵声を飛ばしたことだ。

観客やファンはちゃんとわかっている。

FJ時事新聞
責任編集:拡輪 明-HS099