日本の寺社や家屋は、古来より木を使っているのは今さらいうまでもないが、これら木造建築は釘を1本も使わずに木のみで接いだりしている。
その古来から伝わる木を接ぐ技術を組木という。
現在の木造建築はコストや手間を考慮した結果、ビスやボルト等の金物を使った「在来工法」が一般的となり、木の腐食や経年変化等によって、留めているビスやボルト等に緩みが生じ、木と木の接いている強度が低下することがある。
しかし、この日本古来から伝承される組木ならば、木が腐食しても、その腐食した箇所のみ切り落とし、新しく木を組木によって継ぎ足すことができ、木造建築であろうとも何千年も建っていられるのだ。
そうした組木を観たり、体験できたりする施設が岐阜県飛騨市にある飛騨の匠文化館だ。
飛騨市は古来より「匠の里」として栄えてきた歴史があり、現在でも建築業従事者の割合が高いといわれている。
奈良時代(710年~794年)以降、高度な技能を持つ飛騨の匠たちは、藤原京や平城京、平安京等の歴代の都に派遣されていた。
その飛騨の匠たちの仕事ぶりは、万葉集や日本書紀等でも紹介され、彼らの持つ高度な技能への賞賛が記述されている。
そういう匠の地であるという背景があり、飛騨の匠文化会館が存在しているのだ。
飛騨の匠文化会館の体験コーナーでは、飛騨の伝統技術の1つで、角材の組み合わせに細工を施した「千鳥格子」や、様々な木組みパズルに挑戦することが可能だ。
また、組木のサンプルが展示されており、どのような形で木を加工し、接いでいるのかも観ることができる。
比較的簡単な組木もあれば、かなり複雑な形状をした組木もあったりするのだが、基本は2材を繋いで1本の材にする際は「男木(おぎ)」と「女木(めぎ)」が存在する。
以下の写真は「腰掛蟻継」と呼ばれる組木で、「男木:突起状のもの(右)、差し込む側」、「女木:凹状のもの(左)、男木を受け止める側」となっている。
この手の加工をする際に最も重要なのは、女木の凹形(左赤丸部分)は、必ず木の「元口(木の根っこ側の事)」に加工をすることだ。
元口は木の先端(末口)に比べ密度が高いため、男木が女木に差し込まれた際に緩みにくいから「女木は元口」が鉄則なのだ。
博物館展示に飽きたらず、普段から多くの種類の組木を観たい人は、インターネット上でも観ることができる。
以下のGIF画像は、『The Joinery』というTwitterアカウントで紹介されている組木の1つだ(リンク先のURL)。
箱隠し継ぎ Hako-kakushi-tsugi pic.twitter.com/1pXO6v1RhE
— The Joinery (@TheJoinery_jp) 2016年5月31日
実物の組木ではないのだが、ついこのアニメーションを見入ってしまう。
以上、組木について駆け足で取り上げてきたが、実際に飛騨の匠文化館に行って、組木体験もしてみると、さらに組木への興味が湧き、知識も深まること確実だ。
【飛騨の匠文化館】
・所在地:岐阜県飛騨市古川町壱之町10-1
・アクセス:JR高山本線「飛騨古川」駅から徒歩5分
・電話:0577-73-3321
・営業時間:9:00-17:00
・定休日:木曜日、年始
■飛騨の匠文化館(Takumikan Craft Museum) – ホーム | Facebook
https://www.facebook.com/takumibunkakan/
■飛騨の匠文化館|観光・体験|飛騨市公式観光サイト「飛騨の旅」
https://www.hida-kankou.jp/spot/21/article/
■Twitter The Joinery
https://twitter.com/TheJoinery_jp