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高齢者の入院は逆効果の場合あり【連載:アキラの着目】

先日、四国にいる筆者の祖母が入院した。

かなりの高齢で筋力も衰え、1人で生活させるにはあまりにもリスクが高いと、祖母の世話をする親戚が判断したからだ。

低いベッドから転げ落ちても、再びベッドに上がって横たわることすらできなくなり、それをたまたま祖母の面倒を数日間みるために帰省していた筆者の母が見つけて、その時は大事に至らずに済んだ。

筆者の母も関東の我が家に戻って来なければならず、祖母のそばにずっと付き添うことはできないので、今後、祖母が今回と同様のベッドから転げ落ちることがあったら、風邪をひき、こじらせてしまい、大事に至ることは確実だろう。

なので、祖母の入院はやむを得ないことだったのだという。

病室のベッド

だが、入院したのだから、てっきり祖母の体調が良好になると思いきや、実際はその逆の状況になってしまった。

入院するまでは、たこ焼きや肉、ピザなども我々同様にガツガツ食べていたり、声もしっかり出て話していた祖母だったが、入院した途端に、病院食の味が合わないのか、食も細くなり、食べることができなくなってしまい、力を振り絞らねば声を発することができない状況に陥ってしまった。

以上の状況に急変するのに要した期間は、わずか2日間だけだった。

筆者が四国まで飛行機で行き、病院に駆けつけた時には、筆者の名前を微かに発するだけで、右腕には食事の代わりに注入される点滴の管が刺し込まれていたのだった。

かえって入院させたことが裏目に出てしまい、結果的には生命力を削がれ、寝たきりになってしまうことは、何も筆者の祖母だけではなく、かなり多く見受けられるケースなのだという。

なぜ、入院すると逆効果なのかというと、以下のようなことが主に生じるからだ。

(1)筋力の低下

入院すると寝たきりとなり、筋肉を使わなくなるので、筋力が低下する。

よって手足が痩せ細って歩行などの動作が困難になる。

海外の報告によると、2週間の安静で筋肉が2割以上落ち、以前と同じ状態に回復するまでに、リハビリで6週間を要したというのがあり、また、通説として80歳以上で寝たきりになってしまうと、1日に2%の筋力が低下するともいわれている。

この通説にしたがえば、1ヵ月間も入院すれば、筋力は半分以下にまで落ちてしまうことになる。

さらに、体を動かさないでいると、周囲をコラーゲン等の結合組織で覆われている関節・骨関節が「拘縮」といって、くっついて固まってしまい、可動域範囲が狭まってしまうようになる。

(2)摂取カロリーの低下

病院では、当然のことだが、自分の好きな物を自由に食べさせてもらえなくなる。

病院側は誤嚥性肺炎を恐れているからだ。

カロリーが不足すれば、次第に痩せて筋肉量も減少し、ますます動けなくなり、寝たきりが加速されてゆく。

(3)骨粗しょう症になる

骨は、骨をかたち作る骨芽細胞と、壊す破骨細胞が、相互に作用することで、常に新しく再生されている。

しかし、体を動かさずに寝たきりだと刺激が少なくなり、壊す破骨細胞だけが活性化してしまい、その結果バランスが崩れ、骨が脆くなる。

また、人間の身体は日光を浴びることで、体内で人間の骨や歯を作る上で不可欠なビタミンDの合成が行われるが、病室に寝たきりで日光にあたらないと、骨や歯が脆くなるリスクが高まる。

したがって、骨粗しょう症になりやすくなるのだ。

(4)心肺機能の低下

寝たきりで肺が横向きの状態になると、重力で下がっていた肝臓や腎臓等の臓器が肺の方に近寄り、肺が圧迫されるようになるため、心肺機能が低下し、呼吸に支障が出てくるようになったり、肺炎等の危険性も高まってくる。

最後に

以上のようなリスクが、高齢者の入院では起きやすくなるから、逆効果の場合もあるということなのだ。

やはり、高齢者本人が可能な限り自分で動いて、どうしてもできないことがあったら、周囲の人間が支えたり、手伝ったりするのが理想だが、核家族化が進んだ現在の日本においては、高齢者と同居しているケースが少ないので、前述の理想の通りにはなかなかいかず、病院任せにせざるを得ないのが現状のようだ。

今回の祖母の見舞いを契機に様々なことを考えさせられた。

FJ時事新聞
責任編集:拡輪 明-HS099