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武術でも躰術でもない、楽しく踊る「拳」【連載:アキラの着目】

世界中には、フィクション、ノンフィクション問わず、「拳」が付く様々な武術や、理にかなった躰術が存在する。

少林拳、太極拳、少林寺木人拳、酔拳、笑拳、蛇鶴八拳、蛇拳、龍拳、波動拳…。

ところが今回取り上げる「拳」は武術でもなく、躰術でもないのだ。

その「拳」が野球拳(やきゅうけん)。

野球拳は、愛媛県松山市発祥の郷土芸能・宴会芸で、三味線と和太鼓の伴奏に合わせて歌い踊り、じゃんけんで勝敗を決するものだ。

1924年10月、伊予電気鉄道(現・伊予鉄道)野球部が、高松市で行われた高商クラブとの野球試合で0-6で敗れた後に、旅館での対戦相手との夜の懇親会で、昼の敵を取るべく披露した演技が野球拳の始まりとされる。

世間一般的には、野球拳というと、TVバラエティ番組の影響で、じゃんけんに負けた相手の服を脱がせる”お色気ゲーム”として広く誤認知されているのだが、正式な野球拳、つまり『本家 野球拳』は歴史ある郷土芸能なのだ。

■本家野球拳1

この、伊予・松山の人々が大切に継承してきた『本家 野球拳』を正しく普及させるために家元制度を導入、唄と振付けを考案した富田狸通氏が初代家元となり、現在は、澤田剛年氏が四代目家元として次世代に伝えるべき正統派『本家 野球拳』のさらなる普及活動を展開している真っ最中だ。

「本家 野球拳」の歌詞 本家 野球拳HPから引用
「本家 野球拳」の歌詞
本家 野球拳HPから引用

『本家 野球拳』の活動お披露目場所は、主に毎年4月に開催される松山春まつり「野球拳全国大会」と、8月に開催される松山まつり「野球拳おどり」で、これら以外にも様々なイベントや祭典等を通じて、随時『本家 野球拳』を披露している。

『本家 野球拳』は武術でもなく躰術でもない、平和な踊りの「拳」なのだ。

■本家 野球拳
http://shikoku.me/iyo-matsuri/raijin/honkeyakyuuken/

FJ時事新聞
責任編集:拡輪 明-HS099

様々な分野で巻き起こる「元祖」と「本家」の抗争【連載:アキラの着目】

今年6月に「井筒八ッ橋本舗」(京都市)が、「聖護院八ッ橋総本店」(京都市)を不正競争防止法に基づいて訴訟を京都地方裁判所に起こしたのは記憶に新しい。

こうした同じ物あるいは同じような物を製造・販売する業者同士が「ウチが元祖だ!」、「ウチが本家だ!」と自分たちの方が正統性や歴史を持っていることを主張するのは、もちろん今回が初めてではなく、過去にも様々な分野において論争や訴訟が行われてきた。

ここでおさらいとして「元祖」、「本家」の意味を載せてみる。

●元祖

家系の最初の人をいい、始祖ともいう。

物事を最初に始めた人、鼻祖、創始者、仏教の一宗の開祖。

●本家

一族の中心となる血筋の家。

流派等で、その大元となる家、家元、宗家。

分家が出た元の家をいう。

つまり、「元祖」は最初に始めた人で、「本家」は大元となる家や宗家をいうのだ。

この「元祖」、「本家」を名乗ってる老舗や業者があまたあり、消費者側からすると、どこの店・業者が最も古いのか、正統性があるのかわからず、混乱する元となっていることは確か。

「元祖」、「本家」と名乗っているからには、それに裏付けられた技や味、歴史等があるだろうから、消費者が知りたくなるのは自然なことなのだ。

だが、だからといって別段「元祖」、「本家」がどこであろうが、名乗ってなかろうが、すごい物はすごいし、美味しい物は美味しいから、筆者はどうでもいいかなという気もする。

そんな「元祖」・「本家」、あるいは同じような看板や商品があるという例を、以下にいくつか示してみた。

■納豆(天狗納豆)
・水戸元祖 天狗納豆(http://www.tengunatto.com/)と水戸天狗納豆(株) 笹沼五郎商店(http://www.tengunatto.jp/

藁納豆

■信玄餅系
・桔梗屋「桔梗信玄餅」と金精軒「信玄餅」

■カステラ
・1681年創業・松翁軒「カステラ元祖」と1624年創業・福砂屋「カステラ本家」

■赤福系
・似た物同士の「赤福」と「御福餅本家」

赤福と御福餅

この十数年間、法律バラエティ番組が人気を博していることからもわかるように、日本でも訴訟社会へと進み始め、ちょっとしたことでも訴訟になってしまうような社会となってしまった。

それゆえに、これまで地域や業界で揉め事があったとしても、暗黙の了解の下、地元の名士や経営者の間で上手く調和が保たれてきた部分があったのに、現在は簡単に訴訟になってしまうようになったのだ。

そうした背景が多少なりとも影響しているのだろう、「元祖・本家」論争が訴訟として実際に起こっている。

もう少し、業界全体や消費者の利便性という大きな観点から、皆がプラスになる、メリットを享受できるような思考を持つようになればな、という思いだ。

FJ時事新聞
責任編集:拡輪 明-HS099