かつて文京区本郷は100軒以上の旅館が軒を連ねる一大旅館街だった。
中でも、太栄館は、石川啄木が9ヵ月間宿泊し小説を執筆、北原白秋等が文芸雑誌『スバル』の編集のために宿泊した宿だった。
しかし、そうした文豪たちが愛した老舗旅館も閉館し、現在は鳳明館3館と更新館を残すのみ。
どうやって昔の良き旅館を継続しながら展開しているのかなと思っていたら、なんと鳳明館は、文豪が旅館に缶詰になって小説の原稿を執筆していたことを疑似体験できるサービスを開始。
それが「文豪缶詰プラン」だ。
わざわざ文豪が缶詰になってたような体験を誰が好んでするのかいな、とたかをくくっていたら、この「文豪缶詰プラン」、見事に完売したとのこと。
「文豪缶詰プラン」がいかなる宿泊サービスプランなのか、詳細を以下に記す。
「文豪缶詰プラン オプション」
1.進捗コール(無料)
18時頃に「先生、(小説の原稿執筆は)進んでいますか? 明日の10時にお伺いしますからね」という電話が部屋にかかる。
2.モーニング進捗コール(無料)
翌日の希望時間に「先生、原稿進んでいますか? 今日の10時に原稿の受け取りにお伺いしますからね」という催促電話が部屋にかかる
3.文机レンタル(1泊2日:2000円、2泊3日:3000円)
レトロな文机をレンタル
4.担当編集者(1日3000円)
厳しさレベルは調節可能とのこと。
予め目標を設定し、その作業が終了するまでは、会う度に原稿執筆の進捗を訊いてくるというオプション。
「先生」を外に出させないで原稿執筆に集中してもらう設定のため、買い物代行もしてくれる。
5.外から見張られている体験(1回1000円)
作家の原稿執筆がはかどらない。
「気晴らしで外に出るか。あ、玄関には担当編集者がいて、外に抜け出せないじゃないか。玄関から抜け出せられないのなら、窓から外に抜け出そう。」
そう意を決して作家が窓を開けたら、じっとこちらを見る担当編集者の姿が。
まさに旅館に缶詰にされた恐怖体験を味わえるオプションだ。
6.お膳朝食(1200円)
指定時間の朝食配膳。
7.差し入れ(1000円)
「先生~、お疲れ様です~!」と親切なフリをして担当編集者が差し入れを届けつつ、「で、原稿は進んでいますか?」と訊くオプション。
8.本妻と愛人が鉢合わせ(20000円 ※15分程度)
担当編集者に原稿執筆場所を聴き出した本妻と、連れ込もうと呼び出した愛人が部屋の前で鉢合わせし、「貴女は誰?」、「貴女こそ誰?」という修羅場を再現してくれるオプション。
ある意味、”寸劇”に宿泊者も参加するようなプランと言えなくもないが、文豪に成り切りたいマニアにとっては、文豪と同じ体験ができるということで、この「文豪缶詰プラン」は完売したのだ。
まだ体験できていない文豪マニアは、こまめに鳳明館のホームページをチェックし、「文豪缶詰プラン」の再開を待とう。
■プラン | 旅館鳳明館(RYOKAN HOMEIKAN)
https://www.homeikan.com/bungo-2020