日本国民は昔から銭湯が好きで、町民交流の場としても使っていた。
銭湯そのものの役割としては、身体の衛生を保つこと、リラックス効果、前述した交流の場、浴槽上部に描かれた銭湯絵の観賞、等々、様々なものが挙げられるが、それらをひっくるめて、日本の良き庶民的伝統・風習といえよう。
しかし、それら良き庶民的伝統・風習も、銭湯の減少により、危機的状況に陥っている。
というのも、最盛期には全国に2万3,000軒あったといわれている銭湯が、現在では3,900軒にまで減少しているからだ(2016年データ)。
そんな危機的状況に陥っている銭湯に外国人ながら興味を持ち、「銭湯ジャーナリスト」の肩書を持つ方が、フランス人のステファニー・コロインさんだ。
南フランス出身のステファニー・コロインさんは、2008年交換留学で来日した際に、銭湯に出合う。
湯の良さや、常連客・店主の優しさ、「昔ながらの建物であったり、庭があったり、浴場にペンキ絵があったり、いろいろなアートの形があります」という、銭湯のアートにも心を惹かれ、以降ステファニー・コロインさんは銭湯の虜となった。
現在ステファニー・コロインさんは、豊島区浴場組合HPにて銭湯ナビゲーターを務める他、国内外のメディアにて日本の銭湯の魅力を発信し続けている。
本来ならば、我々日本人が銭湯の良さを世界に向けて発信しなければならないのだが、その役割をステファニー・コロインさんが担っているということだ。
日本は温泉も多い土地柄、美肌目的で温泉地を訪れることはあっても、同じ目的で銭湯を訪れることは通常皆無だ。
だが、ステファニー・コロインさん曰く、銭湯も美容と健康に良いのだとか。
なぜそう思われるのかというと、ステファニー・コロインさんが頻繁に銭湯で世間話をするお年寄りの方が皆、驚くほど肌が綺麗でツヤツヤしているからなのだとか。
あまりきれいではない大気の都会で暮らしていると、空気中の汚れが肌に付着し、肌の老化を促進させるのだが、銭湯でしっかりと身体を温め、発汗し、デトックスすることによって綺麗な状態の肌になる。
そうした経験をステファニー・コロインさん自身も銭湯で感じているとのことだ。
また、ヒートショックプロテイン(HSP)を生み出す場としての銭湯にもステファニー・コロインさん注目しているとのこと。
ヒートショックプロテイン(HSP)とは、傷ついた細胞を修復するタンパク質をいい、免疫力を高めたり、コラーゲンの減少を抑えたり、代謝を良くしたり等、美容にかなり有益であることが近年注目されている。
銭湯に浸かり、身体を温めることによって、ヒートショックプロテイン(HSP)の生成・促進がされるため、美肌効果も期待されるのだそうだ。
最後は、なんといっても、銭湯は心の健康に良い効果があることだとステファニー・コロインさんは言う。
日々の仕事や生活において、どれだけ嫌なことや困難なことがあっても、温かい銭湯に浸かれば、心身ともにリフレッシュし、「また明日もがんばろう!」という気持ちになれるのは、銭湯の多大な効果だと。
我々日本人はあまりにも昔から銭湯を知っており、経験則として以上の効果やメリットは確かに体感していたものの、ステファニー・コロインさんのように銭湯の分析や言語化をしたことはなかった。
ステファニー・コロインさんによって、日本の銭湯が「SENTO」へと認知され、日本の庶民の伝統文化・風習として多くの人に伝わればいいなと思う次第だ。
【ステファニー・コロインさんのプロフィール】
リヨン大学にて日本文学専攻、2008年交換留学で来日し、銭湯と出会い、以降ファンとなる。
2012年再来日以降、銭湯を楽しむ日々を過ごし現在に至る。
2015年、日本銭湯文化協会より銭湯大使に任命される。
●出身地:フランス・プロバンス
●ブログ(英語・日本語):http://dokodemosento.com/
●インスタグラム _StephanieMelanie_:https://www.instagram.com/_stephaniemelanie_/?hl=ja