テレビの密着ドキュメント番組で万引きの瞬間を取り押さえる「万引きGメン」や麻薬の取引き現場に踏み込む「麻薬Gメン」、年配の人には馴染みの刑事ドラマ『Gメン’75』等々、何かを摘発したり、不正を暴く専門組織を「Gメン」(Government men の略)というが、この「Gメン」は経済の商取引の分野にもいることをご存知だろうか?
平成29年1月より「下請Gメン」が現れたのだ。
「下請Gメン」の正式名称は取引調査員といい、中小企業庁が、下請等で経営を支えている中小企業者に向けて、この「下請Gメン」を訪問させ、商取引における「親事業者」や「発注者側事業者」からの不適切な取引や圧力をヒアリングするのだ。
「下請Gメン」がヒアリングした内容は、必要に応じ、秘密保持を前提として、発注者側事業者や業界団体に伝え、適正な取引に向けた取組を強く促していく。
「下請Gメン」にヒアリングしてもらう内容例としては、以下のようなものが挙げられる。
(1)「発注予定額の○○%」等、合理性のない引き下げを「親事業者」や「発注者側事業者」から要請される
(2)光熱費、原材料費等の値上げを「親事業者」や「発注者側事業者」に申請すると、「他社はどこも値上げを言ってきていない」、「貴社だけですよ、値上げしているのは」等と言われる
(3)金型の返却や保管料負担の話を「親事業者」や「発注者側事業者」にしても、何も対応してもらえない
(4)手形では下請代金の受取りまでに数ヶ月がかかり、資金繰りが厳しくなる
以上のようなことがこれまでにあった中小企業者は、即「下請Gメン」にヒアリングしてもらおう。
「下請Gメン」は、中小企業者からヒアリングした後、次のようなことも併せて行なっている。
1.「親事業者」や「発注者側事業者」に取組を促す
前に少し触れたように、中小企業者からヒアリングした話の秘密を守りつつ、「親事業者」や「発注者側事業者」等に適正な取引を促す(取引条件の見直し、業界団体の自主行動計画作り等)。
2.ルール作りにも反映(中小企業庁 取引調査員)
中小企業者からヒアリングした意見を集約し、基準の改正等につなげる(上の4つの事例は、ヒアリング等で訊いた内容をもとに、平成28年12月に不適正な取引例として基準に追加されたもの)。
「親事業者」や「発注者側事業者」から取引を打ち切られ、自社の売上が低迷するとまずいということで、なくなく「親事業者」や「発注者側事業者」の言いなりになってきた中小企業者。
しかし、「下請Gメン」が設置されたことで、「親事業者」や「発注者側事業者」からの無理難題な要望や不適切な取引・圧力に対し、もう一方的に泣き寝入りすることは少なくなる。
「親事業者」や「発注者側事業者」から脱却するために、独自製品の開発や独自ブランドの立ち上げができる中小企業者ならば問題ないが、大多数の中小企業者は「親事業者」や「発注者側事業者」からの発注で成り立っているだけに、「下請Gメン」の活躍は今後しばらくの間、期待され続けるだろう。
【「下請Gメン」によるヒアリング受付部署一覧】
・北海道各経済産業局 産業部中小企業課 011-700-2251
・東北各経済産業局 産業部中小企業課 022-217-0417
・関東各経済産業局 産業部適正取引推進課 048-600-0324
・中部経済産業局 産業部中小企業課 052-589-0170
・近畿経済産業局 産業部中小企業課 06-6966-6037
・中国経済産業局 産業部中小企業課 082-224-5745
・四国各経済産業局 産業部中小企業課 087-883-6423
・九州各経済産業局 産業部中小企業課 092-482-5450
・沖縄 内閣府沖縄総合事務局経済産業部中小企業課 098-866-1755
・中小企業庁事業環境部取引課取引調査班 03-3501-3649(直通)
■中小企業庁:取引調査員(下請Gメン)による訪問調査について
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/Gmenhoumon.htm