貴方は”カスハガ”をご存知だろうか?
「は? ”カスハガ”って聞いたこともない。何それ?」と返答する人が8割方だろう。
逆にいえば、残り2割の人たちは、”カスハガ”を知っているだろうということだ。
この”カスハガ”、イラストレーターであり、テレビ朝日系『タモリ倶楽部』でよくお目にかかる、みうらじゅん氏が”家元”のジャンル。
”カスハガ”とは、大小様々な観光地の土産物屋で売っている「“カス”のような絵ハガキ」をいい、略して”カスハガ”なのだ。
要は「なぜこの写真を絵ハガキに採用したのか?」という疑問と、そのおかしさを伝えたいがために、今から22年前の1996年にみうらじゅん氏が”創始”した。
通常の絵ハガキと呼ばれる類の物は、有名どころの観光地ならば、その観光地の名所旧跡や特産品、または祭り等の行事を紹介するために撮影し、絵ハガキにしているものが圧倒的に多いだろう。
絵ハガキに採用された写真は、いまだ訪れたことがない人に対しても「この観光地に行ってみたいな」という気にさせるような作りの、きれいな写真ばかりのはずだ。
しかし、有名な観光地の絵ハガキに触発された、大して有名でもない観光地が「ウチの観光地でも絵ハガキを作ろう!」と見切り発車すると、絵ハガキにするほどの名所旧跡や特産品がなく、仕方なく最近きれいに改装された駅ビルや駐車場、さわやかトイレまでもが絵ハガキとして採用されてしまうのだ。
”カスハガ”の最たる特徴は、「何で中央に柱を入れ込むかねぇ」といった構図の悪さだ。
接写し過ぎて被写体が何なのかよく分からぬもの、等々ダメさ加減を挙げればキリがないが、そもそも絵ハガキという以上、誰かがハガキに近況等を書き、投函し、郵送されるのが本来の使いみちのはずなのだが、では「”カスハガ”は一体、誰が投函し、郵送するのか?」という疑問が一目見て湧くことも、”カスハガ”の特徴とみうらじゅん氏は語る。
「今、○○に観光で来ています。とてもいい所なので、今度は君と来たいな」等と、旅の浮かれ気分で書き添えて投函した絵ハガキが、たまたま”カスハガ”であった場合、受け取った彼女あるいは彼氏は、決して心ウキウキする気にはならないだろう。
「”カスハガ”は、使いみちを誤れば、”凶器”になってしまう」とみうらじゅん氏がいうのは、まさにこのことなのだ。
本来は、観光地を盛り上げるべく(!?)作られた絵ハガキなのに、むしろ逆効果になりかねないような”カスハガ”ができてしまうという矛盾や可笑しさ。
それを追求したジャンルであることをおわかり頂けたであろうか。
■タモリ倶楽部 1996/04/05 永久保存版 カスハガ全部見せます