日本女子団体パシュート(追い抜き)金メダル獲得の秘密【連載:アキラの着目】

2018年02月23日

平昌オリンピックで見事に金メダルを獲得した日本の女子団体パシュート・メンバー。

金メダル獲得の裏には、新たな技術革新が3つあったのだ。

1つ目は、「一糸乱れぬ隊列」、2つ目が「先頭選手の素速い交代」、そして3つ目が「エース選手を存分に起用」だ。

順番に見ていこう。

1.女子団体パシュート金メダル獲得の秘密「一糸乱れぬ隊列」

なぜ「一糸乱れぬ隊列」を実現させる必要があったのかというと、それはこんな理由からだ。

メンバー全員の隊列が一直線に揃わずに、前の選手から横に40cmずれただけでも、先頭選手と同じ風の抵抗を受けてしまうのだ。

その状態は、すなわち後ろの選手が一人で滑走するのと同じくらいの空気抵抗がかかってしまうことを意味し、各選手の体力・スタミナを消耗してしまうのだ。

そのため、空気抵抗を受けるのを極力先頭を走る選手のみにすることで、「一糸乱れぬ隊列」を実現させることになった。

この「一糸乱れぬ隊列」の実現で隊列全体としては15%の空気抵抗を減少させることができた。

また、「一糸乱れぬ隊列」を実現させることで、足や手の動きが皆シンクロし、互いの足、手がぶつかって転倒するリスクも軽減できている。

「一糸乱れぬ隊列」を実現させるために、前回のソチオリンピックから平昌オリンピックまでの4年間、ひたすら同じメンバーで滑り続け、メンバーの滑りにおける特徴や癖をそれぞれ叩き込んだのだった。

2.女子団体パシュート金メダル獲得の秘密「先頭選手の素速い交代」

団体パシュートは、先頭を滑る選手が入れ代わるため、その交代を素速く機敏に行えば、タイム短縮に繋がる。

それはちょうど陸上競技のリレーにおけるバトンの受け渡し時間をいかに短縮させるかみたいなものだが、団体パシュートでは陸上競技のリレーにおけるバトンの受け渡しよりもさらに考慮すべき点があり、時間短縮以外に体力の消耗を最小限に抑えることも必要なのだ。

通常、先頭選手の交代は、先頭選手がスピードを落とし、最後尾に回る方法を各国とも採用している。

しかし、この一連の動作、先頭選手が一旦スピードを落とし、最後尾につくと、再び隊列と同じトップスピードまで上昇させるという動作に、かなりの体力を消耗するのだ。

そこでパシュート日本女子チームが発案・実践した方法が、先頭選手は従来のようなスピードを落とすことなく、その代わりに一旦コースを大回りで膨らみ、そこから最後尾につくというものだ。

『NHK SPORTS STORY』の「女子団体パシュート 世界最速の秘密」から引用
『NHK SPORTS STORY』の「女子団体パシュート 世界最速の秘密」から引用

この方法により、先頭選手はスピードを落として、またスピードを上げて、といった体力の消耗を抑えることができ、最後まで体力を温存させることができるようになったのだ。

3.女子団体パシュート金メダル獲得の秘密「エース選手を存分に起用」

パシュート日本女子チームが3つ目に採用した戦術は、他の選手よりも体力のあるエース選手の高木美帆選手を存分に起用するというもの。

高木選手が全6周のうち3.5周を先頭で滑ることにより、他の選手の体力消耗を最小限に抑えることが可能となり、その結果、パシュート日本女子チームは、さらにタイムを縮めることができたのだ。

最後に

スポーツは、もちろん身体でやるものではあるものの、頭でもやるものであり、科学的、理論的な裏付けなしに、ただやみくもに根性だけでやる時代ではなくなってきている。

パシュート日本女子チームが今回採った戦術は、今後各国チームの分析・研究のメスが入り、戦術の拡散化も始まることだろう。

FJ時事新聞
責任編集:拡輪 明-HS099